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権利・ルール

AI音声・声クローンで配信するときの権利と注意点【2026年版】

AI音声や声クローンで配信するとき、声そのものは、著作権の対象外ですが、パブリシティ権などの権利で守られます。Apple Podcastsなどの配信サービスは、AI音声であることの開示も求めています。2026年には、声の無断利用について法務省が解釈指針をまとめ、考え方の整理が進みました。この記事は法律相談ではなく一般的な情報のため、それぞれのケースは弁護士などの専門家にご相談ください。

目次
  1. 「声」はどんな権利で守られる?
  2. どんな使い方が問題になりやすい?
  3. 「AI音声です」と伝える
  4. 音声AIサービスの規約も確認する
  5. 声クローンで配信するときのチェックリスト
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 参考資料

「声」はどんな権利で守られる?

声そのものは著作権の対象外

文化庁の文化審議会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」では、作風や声は「著作権法上の権利の対象とならない部分」として扱われています⁠[1]。台本や歌詞、使うBGMの著作権は、AI音声で読み上げるときも、これまでどおり守らなければなりません。AIで作ったものがすでにある作品に似ていて、それをもとに作られた(依拠した)と認められれば、著作権侵害になりえます⁠[1]。

AIで作った音声に、著作権はある?

AIは、著作者にはなれません。同じ文化庁の考え方では、AIで作ったものが著作物になるかは、人の創作的な寄与があるかで判断されます⁠[1]。

アイデアを示すだけの指示では、著作物とは認められないと考えられています。一方で、人が書いた台本の著作権は、AIで読み上げても失われません⁠[1]。

声クローンの元にする録音にも、権利がある

声を録音したデータには、声とは別に、権利が生じている場合があります。歌や朗読など、演じた声には演じた人(実演家)の権利が、録音には最初に録音した人(レコード製作者)の権利があります⁠[2]。

文化庁の考え方も、声優などの声を含む実演・録音とAIの関係を、今後も議論を続ける対象に挙げています⁠[1]。番組やアニメから切り出した声ではなく、本人に新しく録音してもらうと安心です。

パブリシティ権と「声をみだりに利用されない権利」

有名人の肖像などが持つ、人を引きつける力(顧客吸引力)を守る権利を、パブリシティ権といいます。最高裁は2012年の判決で、もっぱら顧客吸引力を利用する目的で肖像などを無断で使う行為は、違法になると示しました⁠[3]。肖像などをそれ自体を楽しむ商品にする、商品の差別化のために付ける、広告に使う、などがその例です⁠[3]。

2026年には、法務省の検討会が報告書(生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針)をまとめました⁠[4]。報告書は、人の声は本人を識別する情報であり、人格の象徴でもあるとして、パブリシティ権で守られると整理しています。あわせて、声は「みだりに利用されない権利」の対象にもなるとしました⁠[4]。

2026年10月の改訂版では、東京地裁の判決(2026年9月30日)も取り上げられています⁠[4]。声優の声に似た音声を無断で使った動画をめぐり、声がパブリシティ権の対象になると述べた判決です。

不正競争防止法と、法改正の議論

政府の「知的財産推進計画2026」は、声などを守るための方針を示しています⁠[5]。ガイドラインを作るとともに、不正競争防止法の改正を含む法整備が必要かどうかを、これからも議論するとしています。ルールは今も変わりつつあるので、最新の情報を確かめながら進めましょう。

いまの不正競争防止法がかかわる場合もあります。声などが商品や営業を示すものとして広く知られていて、似たものを使って混同を生じさせると、不正競争にあたる場合があるとされます。特に著名な場合は、本人と無関係だと書き添えても、あたりうると整理されています⁠[6]。

どんな使い方が問題になりやすい?

よくある例を4つ挙げます。

  • 有名人や声優に似た声で、ナレーションや広告を作る:法務省の報告書は、パブリシティ権の典型的な場面を挙げています⁠[4]。声だけを楽しむ商品(ボイスメッセージなど)や、広告のナレーションです。
  • 「AI○○」「○○風」と書けば大丈夫だと考える:本人と結びつく名前の表示は、声が似ていることとあいまって、本人の声を使ったと認める要素になるとされます⁠[6]。YouTubeも、AIで作ったと開示しても、他人の容姿や声を無断で使ってよいことにはならないとしています⁠[7]。
  • 収益目的でなければよいと考える:収益目的がないことだけでは、権利侵害を否定する要素にはならないとされています⁠[6]。
  • 亡くなった人の声なら問題ないと考える:故人の声を使うと、遺族が故人を敬い慕う気持ちを傷つけるおそれがあるとされます⁠[6]。

なお、ものまねや声帯模写は、ふつうはパブリシティ権の侵害にはならないとされています。ただし、聞き手が本人の声だと誤解するようなときは、侵害となる余地があります⁠[4]。

権利を侵害すると、どうなる?

パブリシティ権の侵害では、損害賠償を求められることがあります。裁判例では、使用料にあたる額が認められることが多いとされます⁠[6]。投稿の削除など、差止めの対象にもなります。

声をみだりに利用されない権利の侵害では、主に慰謝料が問題になります⁠[6]。YouTubeでは、顔や声を似せたAIのコンテンツについて、本人がプライバシーの申し立てで削除を求められます⁠[7]。

「AI音声です」と伝える

AI音声を使っていることは、聞く人にきちんと伝えておきましょう。

配信サービスのルール

  • Apple Podcasts:合成音声やAIで作ったホスト、実在の人物のAI複製などを使う番組が対象です。各エピソードと番組のコンテンツとメタデータで、わかりやすく開示するよう求めています⁠[8]。
  • YouTube:本物と見分けがつかないAI生成・改変コンテンツは、開示しなければなりません。実在の人物が言っていないことを言っているように見せるものなどが対象です。自分の声をクローンしたナレーションは、開示がいらない例に挙げられています⁠[9]。
  • Spotify:合成・改変したメディアを、害を及ぼすおそれのある形で本物として広めることを禁じています⁠[10]。

サービスごとの登録の流れは、Podcastの始め方と配信先への登録手順をご覧ください。

海外のルール:EUのAI法と米国の州法

EUのAI法(AI Act)第50条は、実在の人物などに似せて本物のように見せるAIで作った音声(ディープフェイク)について定めています。こうした音声を使うときは、AIで生成・加工したことの開示を求めています。規則は2026年8月2日から適用されています⁠[11]。EUのリスナーに向けて配信するときは、確かめておきましょう。

アメリカのテネシー州は、2024年7月に施行した「ELVIS法」で、声を本人の財産権と定めました。許可がないと知りながら声を公開・配布した人などの責任も定めています⁠[12]。

業界団体の要望

日本俳優連合など音声業界の3団体は、声を学習・利用するときの本人の許諾と、AIで作ったものであることの明記を求めています⁠[13]。日本俳優連合は2026年10月に「音声に関する生成AI利用ガイドライン」を公表しました⁠[14]。ガイドラインは、個人の配信者も対象に含めています。学習・モデル作成・利用のそれぞれで、書面の同意を得ることや、AI生成であることの表示を求めています⁠[14]。

クレジットには、AIで作った音声であること、使ったAIサービスの名前、声の持ち主の名前を入れるよう求めています。名前は、本人が出さないよう求めることもできます⁠[14]。

音声AIサービスの規約も確認する

文化庁のチェックリストは、AIサービスを使う前に利用規約を確かめ、それに従って使うよう求めています⁠[15]。主な音声AIの規約には、次のような定めがあります。

  • Fish Audio:他人の知的財産権などの権利を侵害する使い方と、AIで作ったものを、すべて人が作ったものと偽る使い方を禁じています。AIで作ったことを、自ら開示するよう勧めています⁠[16]。
  • ElevenLabs:本人のはっきりした同意などなしに、生きている人の声をクローン・合成・なりすましすることを禁じています⁠[17]。
  • Google(Gemini):人をだます目的で、はっきり示さずに個人になりすますことや、AIで作ったものを人だけが作ったと偽ることを禁じています⁠[18]。

商用利用とクレジットの条件

番組で収入を得てよいか、クレジットがいるかも、サービスやプランで違います。ElevenLabsは、無料プランでは商用利用を認めず、公開するときはタイトルにクレジットを入れるよう求めています⁠[19]。

VOICEVOXは、ソフトを商用・非商用を問わず使えますが、VOICEVOXを使ったと分かるクレジットが必要です。作った音声は、声ごとの規約にも従います⁠[20]。

声クローンで配信するときのチェックリスト

AI音声で配信する前の3つの確認の図。声の許可(自分の声か、本人の書面の許可)、AIの開示(説明欄と音声で伝える)、規約と権利(台本・BGM・サービスの規約)
AI音声で届けるまえに、たしかめておきたい3つのポイントです。

配信の前に、次の8点を確かめておきましょう。

  1. 使う声は、自分の声か、本人から書面で許可を得た声にする。共演者や家族の声も同じ(目的・範囲・媒体・期間を決めておく)⁠[13]⁠[14]。
  2. 同意の記録と、どの声で何を作ったかの記録を残しておく⁠[14]⁠[15]。
  3. 同意の取り消しや削除の依頼に応じる手順を決めておく⁠[14]。
  4. エピソードの説明欄と音声の中で、AI音声であることを伝える⁠[8]。
  5. 実在の人物になりすましたり、言っていない発言を作ったりしない⁠[17]⁠[18]。
  6. 台本・歌詞・BGMの権利を確かめる⁠[1]。
  7. 音声AIの規約で、商用利用とクレジットの条件を確かめる⁠[19]⁠[20]。
  8. 声のデータは、個人を識別する情報になりうるものとして、気をつけて扱う⁠[21]。

自分の声を登録して使う手順は、声クローンの登録方法を見てください。

自分の声の登録画面。音声アップロード、Fish Audioへの送信同意、登録ボタン
Podoricaで声を登録する画面。送るまえに、同意のチェックがあります(画面はサンプルです)。

よくある質問

声は、著作権で守られますか?

声そのものは、著作権の対象にはなりません⁠[1]。声は、パブリシティ権や「声をみだりに利用されない権利」で守られる、と整理されています⁠[4]。

AIで作った音声に、著作権はありますか?

AIは著作者になれず、AIで作ったものが著作物になるかは、人の創作的な寄与で判断されます⁠[1]。人が書いた台本の著作権は、AIで読み上げても残ります。

自分の声をクローンして、配信してもいいですか?

自分の声なら、ほかの人の権利とぶつかる心配は小さくなります。それでもApple Podcastsでは、合成音声を使う番組に、わかりやすい開示が求められます⁠[8]。説明欄と音声の中の両方で伝えておくと、安心です。

有名人に似た声を使ってもいいですか?

本人の許可なく使うと、パブリシティ権の侵害になりうると整理されています⁠[4]。「○○風」と書いても、本人の声を使ったと認める要素になるとされます⁠[6]。

お金をかせがない番組なら、他人の声を使ってもいいですか?

いいえ。お金をかせぐ目的がないことだけでは、権利の侵害でないとは言えない、とされています⁠[6]。使うなら、本人から書面で許可をもらいましょう⁠[14]。

AI音声は、商用の番組にも使えますか?

使う音声AIの規約しだいです。ElevenLabsの無料プランは商用利用を認めていません⁠[19]。VOICEVOXは商用でも使えますが、クレジットの表記が必要です⁠[20]。

まとめ

声は著作権の対象ではありませんが、パブリシティ権や「声をみだりに利用されない権利」で守られる、という整理が進みました。自分の声か許可を得た声だけを使い、AI音声であることをはっきり伝える。この2つを守ることが、リスナーにも声の持ち主にも信頼される番組づくりの基本です。

ルールは今も変わりつつあるため、各機関や各サービスの新しい情報を確かめてください。声で伝える台本の組み立ては、聴きやすい音声台本の作り方で紹介しています。

原稿があれば、声の番組に。

Podoricaは、台本やブログ・メルマガの文章から、AI音声のPodcastを作るスタジオです。自分の声の登録、読み方の辞書、BGMの仕上げ、RSSでの配信までまとめてできます。

無料ではじめるFreeプランは毎月3,000文字まで。クレジットカードの登録は不要です。

参考資料

  1. AIと著作権に関する考え方について文化審議会著作権分科会法制度小委員会(文化庁)(2024年3月15日)
  2. 著作権法(第2条・第91条・第92条の2・第96条・第96条の2)e-Gov法令検索
  3. 最高裁判所第一小法廷 平成24年2月2日判決(平成21(受)2056)裁判所(2012年2月2日)
  4. 肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書―生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―法務省(2026年8月(2026年10月22日 第1.1版))
  5. 知的財産推進計画2026知的財産戦略本部(2026年6月12日)
  6. 肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書 概要資料法務省(2026年)
  7. Learn about likeness claimsYouTube ヘルプ
  8. Content guidelines(1.11 Artificial Intelligence Generated Content)Apple Podcasts for Creators
  9. 生成 AI コンテンツの使用に関する開示YouTube ヘルプ
  10. Platform Rules(Deceptive Content)Spotify
  11. AI Act Article 50: Transparency obligationsEuropean Commission AI Act Service Desk
  12. HB 2091 / Public Chapter 588(Ensuring Likeness, Voice, and Image Security Act of 2024)Tennessee General Assembly(2024年7月1日施行)
  13. 生成AIに関する音声業界三団体の主張日本俳優連合・日本芸能マネージメント事業者協会・日本声優事業社協議会(2024年11月13日)
  14. 音声に関する生成AI利用ガイドライン Ver1.0日本俳優連合(2026年10月15日)
  15. AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス文化庁著作権課(2024年7月31日)
  16. Terms of UseFish Audio(2024年8月18日施行)
  17. Prohibited Use PolicyElevenLabs(2026年10月9日更新)
  18. Generative AI Prohibited Use PolicyGoogle(2024年12月17日更新)
  19. Can I publish the content I generate on the platform?ElevenLabs Help Center
  20. ソフトウェア利用規約VOICEVOX
  21. 個人情報の保護に関する法律施行令(第1条第1号ニ)e-Gov法令検索

記事の情報は2026年10月30日時点で確認したものです。各サービスの仕様や調査の数字は変わることがあります。

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この記事の監修者

エダコDX / edacodx production

FMラジオを中心に100番組以上を企画・制作してきたラジオプロデューサー。bayfm、ラジオ大阪、かわさきFMなどで番組をプロデュースし、自身も出演しています。元戦略コンサルタント。Podoricaの番組づくりとコラムを監修しています。

監修者のプロフィール

この記事は、Podorica編集部が公的機関・公式の情報を調べて執筆し、監修者が2026年10月30日に内容を確認しています。法律などの判断が必要な場合は専門家にご相談ください。編集方針

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